三重県鈴鹿市若松中の大黒屋光太夫(こうだゆう)記念館で3月16日まで開催中の特別展に合わせ、作家吉村昭さん(1927~2006年)の小説「大黒屋光太夫」について、市の代田美里学芸員が解説した。地元の光太夫(1751~1828年)は江戸後期の千石船の船頭で、遭難してロシアに流された後、10年がかりで帰国し、鎖国下の日本に初めてロシア情勢を伝えた。市が運営する記念館は、光太夫に関する多くの史料を所蔵しており、解説では30人近くが耳を傾けた。

特別展は「吉村昭『大黒屋光太夫』をめぐる旅ー史料から紡(つむ)がれる世界」のテーマで、この小説の貴重な下書き(草稿)も公開している。2001(平成13)年から翌年にかけ毎日新聞に連載された新聞小説。代田学芸員は、吉村さんの妻で作家の津村節子さんと連絡を取り合った時、草稿を無償で譲ってもらえることになり、「数日すると(市役所に)小包が届いた」と明かした。400字詰め原稿用紙200枚に上り、万年筆で書き間違えた大黒屋幸太夫の「幸」の字を「光」に直すなどしている。

津村さんから市にあてた「未完成なものですが、お世話になった鈴鹿市に納めていただければ幸です」との連絡の文書も特別展の図録で紹介。きちょうめんな文字で原稿用紙のマス目を一字一字埋めるように手書きされた草稿が、どのように加筆や修正されたかについても説明した。小説の執筆に当たり、吉村さんは、若松地区に足を運んだ。記念館は入場無料。特別展は3月16日まで。休館日は月曜(休日の場合は開館)、火曜、第3水曜日。

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